30代の経理の転職は大企業は実務経験を重視するため、資格がないと通常は未経験で転職するのは難しいです。
例外としてUSCPAは英語×会計で高度な知識を有している証明となり、大企業(グローバル企業)から未経験でも需要が高い人材ですよ。
勤め先や関連会社で、20代だけでなく30代未経験でも経理に転職したUSCPAをお持ちの方を採用したケースは多々あります。
この記事では、USCPAで経理未経験の転職を検討している方へ向けて、20代・30代別に経理への転職のコツを紹介します。私は未経験者から経理になっており、現在は海外駐在でCFOを務めています。また、採用担当でUSCPA持ちの方を何度も面接した経験があるのでお役に立てるかと思います。
では、纏めていきます。
【前提】USCPAが実務経験なしでも需要が高い理由3つ
USCPAを保有している人材が企業に求められる理由は、大きく分けて3つあります。
- 米国会計基準(IFRS)を理解している:(IFRSと米国基準は似ているので親和性がある)
- 英語×会計の希少性
- 難易度が高い資格を取得した能力
この3点を全て持つ人材は、社内と社外を探しても見つけるのが非常に難しいのが大きな特徴です。なので、30代で未経験者であってもUSCPAを保有していると転職に成功しやすくなります。
では、一つ一つ解説していきますね。
①企業が米国会計基準を理解している人材を求める理由
世界の会計の流れは投資家が世界規模で投資をしやすくするために、国際会計基準(IFRS)と会計処理を合わせようと動いています。
実際に日本もIFRSで会計処理を行っている企業が増えています。現在は日本基準で会計処理を行っている会社も将来はIFRSを採用する流れになることは間違いありません。
なぜUSCPAがIFRSと関係があるのかと言うと、USCPAで学ぶ米国会計基準はIFRSと処理が共通する部分が沢山あります。
米国会計基準を学べばIFRSの会計処理をほとんど網羅できる仕組みとなっております。
なので、企業はIFRSの知識を有する人材(USCPA保有者)を確保して、IFRSの導入やIFRS監査に耐える仕組みを作りたいと考えています。
日本基準に代えて、IFRSが強制適用されることも検討されているので、特に上場企業はUSCPA保有者の採用を強化しています。
IFRSが勉強できる本→【IFRSを学ぶのにおすすめな本5冊】解説が分かりやすい書籍を紹介
②企業が英語×会計のスキルがある人材を求める理由
まずは、経理部の実情をお話します。
超大手企業を除けば、1部上場企業の経理部のメンバーレベル(管理職を除く)のイメージは下記の通りです。
本社の経理メンバーが20名規模と仮定しましょう。
- 英語が話せない、かつ作業的な仕事が中心:13名程度
- 決算の取り纏め可能 or 税務等専門知識持ち:4名程度
- 英語が話せるが、経理知識が弱い:2名程度
- 2+3のレベル:1名程度
なので、英語+会計のスキルがある人材は非常に希少性が高いです。
企業は未経験者であっても、将来【4】のレベルに到達できると考えると、採用に積極的になります。
USCPAを保有している方は、会計だけでなく英語力も期待されています。
英語のスピーキングまでマスターすると、おおきな強みとなるので早い段階から勉強をしておくことをおすすめします。
<英語のスピーキングの勉強に役立つ本>
③企業が難易度が高い資格を取得した人材を求める理由
大前提としてUSCPAの難易度は高いです。
合格率が40%前後なので誤解をされやすいですが、英語+会計等の知識を身につけて4科目を合格するには1500H前後は必要です。
なので、USCPAを取得した場合には、取得までに努力した過程を評価されます。
未経験者の経理採用は、将来の成長力を期待しての採用となります。
USCPA保有者であれば、企業側は経理実務も早期に取得してくれると考えます。
【宣伝】経理のキャリア相談を承ります
経理のキャリアは多種多様なプランがありどの道を目指すかで優先して経験・勉強すべきことは異なります。
例えば、
- 年齢
- 将来経理以外の職種につきたいか
- マネジメントをしたいか
- 制度会計、税務、管理会計、財務、原価計算のどれを武器とするか
- 未経験から経理になるには何をしたら良いか
貴方が置かれている状況をヒアリングして、貴方に最適なキャリアプランをアドバイスさせていただきます。
また、キャリアに関する質問にも回答させていただきますよ。
ココナラで体験談をもとにキャリア相談を承っていますので良かったらご利用ください。→経理のキャリアアップ 経理の転職相談を承ります
【20代】USCPAが経理未経験で転職するコツ3つ
USCPAは経理の資格で最も価値がある資格と言っても過言ではありません。
20代でUSCPAを持っている人材は、滅多にいないので書類選考の通過率が非常に高くなります。
基本的には、20代のUSCPAは選び放題と考えて問題はないですが、3つの注意点があるので紹介します。
- 20代前半と20代後半の違いを意識する
- USCPA=最初から高年収ではないことを理解する
- 面接対策に重点を置く
① 20代前半と20代後半の違いを意識する
経理の未経験採用において年齢は資格以上に大きな意味を持ちます。
基本的に未経験採用は若い方が圧倒的に有利であり、特に20代前半と20代後半では狙える企業に大きな差がでます。
- 20代前半:未経験の求人なら全ての案件で勝負できる(学歴は影響するがUSCPAで挽回できることが多い)
- 20代後半:USCPAだけでは超大手は厳しくなる(例:五大商社・トヨタなど超大手企業)
超大手企業は倍率が非常に高く、他に優秀な若い候補者が沢山います。その中で20代後半の未経験で採用されるにはUSCPAだけでなく、学歴・英語力・仕事での成果を厳しく比較されます。
なので、20代後半である場合には超大手企業だけでなく幅広く他の企業も応募することをおすすめします。
近年はBIG4(EY・デロイトトーマツ・あずさ・PWC)も20代USCPAの採用枠を拡大しているので、コンサルタントや監査業務に興味があれば挑戦をおすすめします。
超大手企業に絞って転職活動が長引き、実務経験を積む期間が遅れる方がマイナスですよ。
【無料相談可能】未経験での転職におすすめの転職エージェント
私が未経験で転職をしたときは、下記の3社を中心に転職活動を進めていました。
エージェント種類 | オススメなポイント | 体験談 |
リクルートエージェント | リクルートエージェントは求人数No.1 非公開求人の紹介、転職市場の動向、過去の事例などを考慮し、非公開求人も含めた多数の求人の中から最適な求人を紹介します。 | 【リクルートエージェントの特徴】体験談と評判からメリットとデメリットを解説します |
doda | dodaが取り扱っている求人のうち、80%以上がサイト上には公開されていない非公開求人です。 自分では見つけられなかった求人もエージェントサービスに登録することで見つけることができます。 | 【dodaの特徴】体験談と評判からメリットとデメリットを解説します |
マイナビジョブ20's | 人材サービスを幅広く扱うマイナビの中でも、20代を専門としているのは『マイナビジョブ20's』のみです。 マイナビの情報網を活かしつつも、20代という若年層に特化しているからこその強みがあります。 通常の転職サイトでは掲載されていないような"非公開求人"が80〜90%を占めています。 | 【マイナビエージェントの特徴】体験談と評判からメリットとデメリットを解説します ※マイナビエージェントの体験談を参照 |
② オーバースペックに注意する
20代でUSCPAは、経験未経験の求人であれば最上位のスペックに該当します。
中小企業はオーバースペックな人材を採用を検討するときに、直ぐに辞めてしまうのではないか?業務に満足できないのではないか?といった悩みを抱えます。また実際の業務においてもUSCPAほどの知識が不要なケースが多く、中小企業ではオーバースペックで落とされることがあります。
少なくとも20代前半でUSCPAを保有していれば、未経験でも大手上場企業の経理に採用されますよ。
なので、まずはUSCPAを活かせる仕事(高度な特殊論点・連結決算・管理会計など)がある経理に挑戦することをおすすめします。
中小企業への転職検討は上場企業レベルの企業の書類選考に全く通過しないときに初めて検討しましょう。
③ 面接対策に重点を置く
20代のUSCPAは資格の力で書類選考を通過できる可能性が高いです。
しかし、書類選考を通過後は他の候補者との競争となるので、対策をしっかりと行わなければ落ちます。実際に私が面接官で簿記1級保有者を不合格としたケースは何度もあります。
USCPA保有者は経理知識の面では他の候補者に負けることは少ないでしょう。
しかし、下記の質問にしっかりと答えられる候補者は少ないです。
- 経理になりたい理由→【企業側の観点】直ぐに辞めないか
- 経理で何の仕事したいか・キャリプラン→【企業側の観点】経理が会社にどのように貢献するかイメージできているか
- 自己PR→【企業側の観点】新卒と比較して候補者を取るメリットは何か
【企業側の観点】から逆算して事前に答えを準備しておけば、類似の質問に全て答えられますよ。簿記1級保有者で上記回答がしっかりとしていれば、内定は簡単に獲得できます。
もし、面接で上手くアピールする自信がなければ、第三者の力を借りてみてはいかがでしょうか。
有料・無料の面接対策→【転職の模擬面接】面接対策サービスを有料・無料ごとにおすすめを紹介
【30代】USCPAが経理未経験で転職するコツ3つ
USCPA保有者は30代でも転職の戦略を間違えなければ早期に採用されますよ。
20代で紹介したコツに加えて、30代特有の注意点があります。USCPAがあれば30代でも戦略さえ間違えなければ、基本的には内定を貰えますよ。
まずは、箇条書きで纏めていきますね。
- 30代のUSCPA保有者が受かりやすい企業を知る
- USCPA=最初から高年収ではないことを理解する
- 書類選考対策に重点を置く
では、一つ一つ解説していきますね。
① 30代のUSCPA保有者が受かりやすい企業を知る
30代で経理未経験の場合には闇雲に大企業の経理未経験求人に応募をしても内定を貰える可能性は低いです。
20代前半の簿記2級と30代前半のUSCPAでは、20代前半の簿記2級が有利となるでしょう。USCPAは素晴らしい資格ですが、10歳前後の年齢を逆転するのは難しいです。
なので、30代のUSCPAが狙い目の企業を狙うことで効率的に転職活動ができますよ。
30代のUSCPAが狙い目の企業は下記の通りです。
- 大企業(上場企業)で海外進出をしている自動車部品メーカー
- IPO狙いのベンチャー企業
では、一つ一つ解説していきますね。
① 大企業(上場企業)で海外進出をしている自動車部品メーカー
自動車部品メーカーは、町工場が進化して上場企業となったケースが多いです。
このケースの場合には、技術者の採用を優先しているので管理部門の人材が不足していることが多いです。傾向として人材の確保に困っていない会社は高学歴を新卒で優先して採用します。なので、四季報や企業のHPで採用大学の実績を確認すれば企業が人材に困っていないか、検討はつきます。
管理部門(経理)で人材不足の場合には、30代で未経験であっても英語力+会計があれば、希少性を活かして採用される確率が高いです。
上場企業で海外進出をしている自動車部品メーカーは福利厚生も良く、かつ30代中盤の平均年収も600万円程度なので未経験でのスタートとしては狙い目です。
上場企業で数年実務経験を積んだ後に、超大手企業にチャレンジするのも選択肢の一つですよ。
② IPO狙いのベンチャー企業
IPOで上場を目指すベンチャー企業は、上場に備えて管理部門を強化することが多いので採用のチャンスがあります。
会社は利益を上げるためには、まずは研究や製造機械に投資をするので、管理部門にまで費用を回せません。なので、採用コストを掛けられずに人材が不足しているケースが多いです。
しかし、上場する段階になると監査が厳しくなるため、管理部門(経理)に投資を回します。
IPO狙いの段階の企業の求人は、他の候補者のレベルはそれほど高くありません。
なので、USCPA保有者は他の候補者と比較して経理適正を見込んで採用される可能性が高いです。
IPO狙いのベンチャー企業は、上場企業を目指しているため上場企業に準じた経理経験が積めます。
なので、IPOに成功しなくても市場価値が高い経理経験者として、再度転職ができるのでおすすめです。
ベンチャー企業の仕事内容が分かる本→【中小企業の経理実務の勉強におすすめな本5冊】分かりやすい書籍を紹介
② USCPA=最初から高年収ではないことを理解する
USCPA保有者であっても経理は未経験であることを忘れてはいけません。
厳しいことを言いますが、経理未経験で年収を交渉できる材料はないので基本的に提示された年収を受けいれるしかありませんよ。
未経験=基本的に今までのキャリアは捨てることを意味するので、高年収でヘッドハンティングされることはないです。
給与水準が低い会社から給与水準が高い会社へ転職する場合は、年収が上がりますが未経験の場合には年収に拘らないことをおすすめします。
30代でUSCPAを取る程に優秀であれば、経理経験を積めば40代で1000万円は簡単に達成できます。
なので、30代の転職は経理のキャリアアップに繋がる実務経験が積める企業を選びましょう。
最短でCFOを目指す作戦→【経理キャリアアップの方法は?】未経験からCFOになった体験談から解説【最短ルート】
③ 書類選考対策に重点を置く
前職が経理と関係なくても30代の場合には、前職で経験したことを経理に活かせないか考える必要があります。
30代は約10年程の社会人経験があるので、前職の仕事内容での成果もビジネスマンの基礎スキルとしてチェックされますよ。
例えば、
- Excelを使った業務改善
- 業務のマニュアル化
- 後輩指導
これらの経験は経理でも使えるので、20代と差別化する意味でも職務経歴書でアピールしましょう。
前職の経験を上手く企業に伝えるには職務経歴書の書き方が重要となりますので、職務経歴書の書き方に自信がない方は添削サービスを利用してみてはいかがでしょうか。
有料・無料の添削サービス→【職務経歴書・履歴書の添削サービス】有料・無料ごとにおすすめを紹介
【Q&A①】USCPAを目指す前に簿記2級を取得すべきか?
USCPAは難易度が高い資格であるため、直ぐに合格できない可能性が高いです。
まずは日商簿記2級に合格してからチャレンジすることをおすすめします。
これには理由が3つあります。
- USCPAの予備校代が100万円近くする
- 日商簿記2級の勉強で会計の適正が図れる
- 日商簿記2級は経理の転職にも役立つ
USCPAは予備校代がとても高額なので、日商簿記2級で会計の適正を確認してから勉強を開始することをおすすめします。
日商簿記2級は経理に必要不可欠な資格なので、取得して損はありませんよ。
簿記2級のおすすめテキスト→【簿記2級の独学】におすすめなテキスト3選
【Q&A②】USCPA取得と転職活動どちらを優先すべきか?
既にUSCPAをお持ちの方は、直ぐにUSCPAを武器に転職活動ができるので大きな問題はありません。
しかし、USCPAをお持ちでない方も勉強と並行して転職活動を実施することをおすすめします。
20代と30代では1歳の重みは全く異なります。30代の未経験の転職は1歳でも若い方が有利です。
なので、USCPAの合格を待つよりも、中小企業かベンチャー企業に経理の実務経験を積むために転職活動をすることをおすすめします。経理の未経験者の求人は少ないため、転職活動を積極的にして応募の機会を逃さないことも大事です。
経理の実務経験を積んだ後にUSCPAを取得して再度転職すれば、経理経験者として上場企業にも再度転職できる可能性が高いです。
経理経験者としての転職活動であれば、応募できる企業も増えますので選択の幅が広がりますよ。
経理としてキャリアアップを考えるならば、未経験者として経理の実務経験を積むのが最優先事項となります。
職務経歴書の作成などで悩みがあれば、無料・有料で相談に乗ってくれるサービスもあるので利用してみてはいかがでしょうか。
無料・有料別の職務経歴書の添削サービス→【職務経歴書・履歴書の添削サービス】有料・無料ごとにおすすめを紹介
【参考】経理に向いているかを科学的に調べてみる
自分が経理に向いているかが気になったら、科学的に適職診断をしてみてはいかがでしょうか。
選択式の質問に答えるだけで、科学的な根拠に基づいて貴方の適職を診断してくれるプログラムがあります。
コンピテンシー診断は、ミイダスが提供する無料の自己分析プログラムです。
貴方の選択した回答に基づいて、適職診断を自動で行ってくれる仕組みです。所要時間は約30分程度なので気軽に行えます。結果を見て頂ければ分かりますが、詳細に性格や職務適性を分析してくれます。無料なので気軽に試せるのでおすすめです。
具体例を見て頂いた方が分かりやすいかと思いますので、私の結果を貼り付けます。
適職診断で使うのは、【職務適性】です。
実際に職務適性を見ると、経理が9と出ています。私自身も経理にとても向いていると考えていますので、分析の精度の高さが伺えます。
※無料登録によりコンピテンシー診断が可能となります。
仕事の価値観診断の纏め→【仕事の価値観の無料診断】転職の成功には適性を知るのが大事な理由
USCPAが実務経験なしで転職するコツの纏め
USCPAは経理資格のなかでも最高峰の資格です。
取得して転職活動をすれば、30代未経験者でも有利になることは間違いありません。
しかし、20代前半・後半、30代とでは狙う企業が異なるので戦略的に転職活動をすることをおすすめします。