税効果会計は日商簿記2級の出題範囲でもあり、言葉は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
経理の実務においては、税効果会計は会計に与える金額のインパクトが大きいので、度々監査で論点になります。
なので、大企業の経理では税効果会計の知識があると重宝されますよ。
この記事では、税効果会計を学ぶためにおすすめな本を紹介します。実際に私が経理の実務で参照していたものなので、税効果会計を学ぶのに役立ちますよ。
では、纏めていきます。
【前提】税効果会計とは何か【目的を考える】
税効果会計を理解するためには、税効果会計をする目的を考えると理解しやすいですよ。
税効果会計の目的は、企業会計と税務会計の期間ズレの調整です。
<具体例>
仮に、売上と賞与引当金繰入(加算・留保)しか生じない会社だと考えてみましょう。
企業会計の利益 | 税務会計の利益 | |
売上 賞与引当金繰入 | 100 △40 | 100 |
税引前利益 or 課税所得 | +60 | +100 |
法人税等(税率20%) | △ 20 | △20 |
法人税等調整額(税効果) | + 8 | ー |
税引後利益 | +42 | ー |
<考え方の流れ>
- 賞与引当金の繰入は当期の損金には算入されないので、法人税等は△20(課税所得100×20%)
- 企業会計の利益は+60に対して法人税等が△20では税金の負担率が33%と20%より高い
- 将来に損金算入できる賞与引当金(加算・留保)の分の税金+8は、企業会計では当期の税金から控除
- 企業会計の法人税等は+12(△20+8)となり、当期の会計上の税金の負担率も20%(12÷60)となる。
税効果会計のポイントとして、将来企業会計と税務会計の差が解消される項目は、法人税等調整額で調整すると考えると分かりやすいですよ。
【参考】税効果会計は法人税の知識があると分かりやすい
税効果会計を理解するには、法人税等の知識があると理解しやすいです。
法人税等の申告書を作成できる必要はありませんが、別表4と別表5の基本事項を学ぶと税効果も直ぐに頭に入りますよ。
<税効果を学ぶ上で法人税の大事な部分>
- 加算と減算の意味
- 留保と流出の違い
- 企業会計と税務会計の代表的な差異
上記ポイントを中心に抑えれば、税効果会計は怖くありません。
おすすめの法人税の本
法人税の解説が分かりやすいおすすめの本→【法人税法の勉強におすすめの本5選】初心者にも解説が分かりやすい書籍を紹介
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【おすすめ】税効果会計の解説が分かりやすい書籍5選
では、おすすめ書籍を纏めていきます。
まずは、箇条書きで紹介します。
- すらすら税効果会計〈第3版〉
- 7つのステップでわかる税効果会計実務入門(改訂版)
- 【図解でざっくり会計シリーズ】1 税効果会計のしくみ(第3版)
- 徹底解説 税効果会計の実務
- 税効果会計の実務ガイドブック: 基本・応用・IFRS対応
では、一つ一つ解説していきますね。
【初学者向け】すらすら税効果会計〈第3版〉
<内容>
税効果会計に苦手意識を持つ人に向けて専門用語を嚙み砕いて説明している本です。本書を読めば税効果会計の基本事項は全てマスターできます。
<実際に読んでみて>
税効果会計は難解なイメージで苦手意識を持つ方が多いですが、本書は法人税等の基本事項のみ解説されているので分かりやすいです。税効果会計の入門書を探している方にはおすすめな本です。経理部の中でも分かりやすいと評判の書籍です。
【初学者向け】7つのステップでわかる税効果会計実務入門(改訂版)
<内容>
税効果会計と法人税の計算の流れを解説しています。本書を読めば税効果会計と申告書の繋がりが理解できますよ。
<実際に読んでみて>
税効果会計と法人税の申告書を丁寧に一つ一つ解説しているので、税金関連の実務の流れが一通り分かります。税効果会計と法人税の繋がりがピンと来ない方にはおすすめの本です。
【図解・初学者向け】【図解でざっくり会計シリーズ】1 税効果会計のしくみ(第3版)
<内容>
EY新日本監査法人の図解シリーズの税効果会計版です。図解で初心者にも分かりやすく説明しているので視覚から税効果会計をイメージできます。
<実際に読んでみて>
EYの図解シリーズは多くの論点で発行されていますが、基本的な事項は図解シリーズを読めばマスターできるように設計されています。本書も回収可能性など経理の実務で躓きやすい事項を丁寧に解説しています。図解で税効果会計を上司や後輩に分かりやすく説明したい方にもおすすめです。
【実務者向け】徹底解説 税効果会計の実務
<内容>
あずさ監査法人が纏めた実務者向けの本です。本書を読めば上場企業や大企業で必要な税効果会計の大部分が理解できます。
<実際に読んでみて>
税務会計と企業会計のズレが大きい会社でも対応できる内容となっています。基本的な回収可能性の考え方は勿論、組織再編など税務会計で実務者が苦労する論点もフォローしてあります。税効果会計の担当者は手元にあると心強い一冊です。
【IFRS 実務者向け】税効果会計の実務ガイドブック: 基本・応用・IFRS対応
<内容>
税効果会計の基本事項からIFRSまで網羅的に記載された本です。本書を読めば日本基準とIFRSの税効果会計の違いが理解できますよ。
<実際に読んでみて>
IFRSの税効果会計は監査法人と議論することが多いです。何故なら日本基準と異なり、回収可能性の要件が明確に定められていないため、会社が考える回収可能性と監査法人が考える回収可能性に相違が生じやすいです。IFRSの税効果会計を担当している方は本書を手元に監査法人と議論することがおすすめです。
税効果会計以外でIFRSを学ぶのにおすすめな本→【IFRSを学ぶのにおすすめな本5冊】解説が分かりやすい書籍を紹介
【参考】法人税を学ぶなら法人税法検定もおすすめ
税効果会計を学ぶついでに、法人税法も本格的に学んでみたい方は法人税法能力検定がおすすめです。
本を読むことでも税法は学べますが、実際に問題を解くことでより深い理解に繋がります。
- 法人税法能力検定(1級~3級)→全国経理協会公式HP(法人税法能力検定)
1級でも優しめの基本的な問題で構成されており、勉強すれば確実に合格できるレベルです。
しかし、1級~3級を学べは税務担当として必要な知識を体系的に勉強できるのでおすすめです。1級まで勉強すれば、基本的な申告業務は一人で作業できるレベルになりますよ。
勉強方法は公式テキストを利用すれば、独学でも全く問題なく合格できます。
法人税法能力検定の公式テキスト
税効果会計を学ぶのにおすすめな本の纏め
税効果会計は難解なので、実務だけで学ぼうとしても混乱することが多いです。
なので、体系的に本で学んだ後に、実務でアウトプットをすると理解しやすいですよ。
税効果会計をマスターすれば、経理部でも一目置かれる存在になるので、頑張って勉強してみてはいかがでしょうか。
一番のおすすめはすらすら税効果会計〈第3版〉です。本書は解説が1番分かりやすいので、税効果会計の入門書としては最適ですよ。