減損会計は金額が多額であり、判断項目が多いので、監査法人と経理で議論になることが多い論点の1つです。
例えば、固定資産の減損損失の仕訳を計上するには、日本基準の場合にはグルーピング→兆候→認識→測定ごとに高度な知識が必要となります。
なので、減損会計については本で体系的に知識を整理することをおすすめします。
この記事では、減損会計を学ぶためにおすすめな本を紹介します。実際に私が経理の実務で参照していたものなので、減損会計を学ぶのに役立つと思います。
では、纏めていきます。
目次
【前提】減損会計とは何か【目的を考える】
減損会計を理解するためには、減損会計をする目的を考えると理解しやすいですよ。
減損会計の目的は、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなったことにより、帳簿価額を本来の価値まで下げることです。
価値の下がった金額(帳簿価額-現在の資産の価値)を、損失(減損損失)として当期のP/Lに計上します。
<具体例>
- 工場を1000円で設立して10年で投資を回収(償却費100円)する前提
- 5年目に減損の兆候があり検討をすると、将来(残り5年間)稼げる見込みは100円しかなかったことが判明
- この場合には、5年目に帳簿価額500円(1000円ー償却費100×5年)から将来稼げる見込み100円を引いた金額(400円)を減損損失として計上
※厳密に解説すると膨大な記述量となるので、詳細な判定フローなどは省いています。あくまでもイメージを掴む具体例と思ってくださいね。
【注意点】減損会計は日本基準とIFRSで差がある
減損会計は日本基準とIFRS共に、将来の回収可能額に合わせて帳簿価額を下げる目的は同じです。
しかし、兆候・認識・測定の方法に日本基準とIFRSでは差が生じます。
日本基準と異なりIFRSには認識という概念がなく、兆候があり帳簿価額が回収可能額を下回ったら減損損失を認識する必要があります。
詳細はあずさ監査法人の解説をご確認ください。→IFRS基準と日本基準の差異
なので、IFRSの減損会計を学びたい場合には、IFRSに対応した書籍を購入する必要があるのでご注意くださいね。紹介する減損損失の本でIFRSに対応して解説している本は、【IFRS対応】と冒頭に明記しますので参考にしてください。
包括的にIFRSを学びたい方におすすめな本→【IFRSを学ぶのにおすすめな本5冊】解説が分かりやすい書籍を紹介
【おすすめ】減損会計の解説が分かりやすい書籍5選
では、おすすめ書籍を纏めていきます。
まずは、箇条書きで紹介します。
- 【図解でざっくり会計シリーズ】4 減損会計のしくみ
- すらすら減損会計
- こんなときどうする? 減損会計の実務詳解Q&A
- 減損会計実務のすべて―図解と実例で会計・税務のポイントをつかむ
- IFRS「固定資産」プラクティス・ガイド
では、一つ一つ解説していきますね。
【図解:初学者向け】「図解でざっくり会計シリーズ」4 減損会計のしくみ
<内容>
EY新日本監査法人の図解シリーズの減損会計版です。図解で初心者にも分かりやすく説明しているので視覚から減損会計をイメージできます。
<実際に読んでみて>
減損会計は複数のステップで判断項目があるので、判定フローを理解することが最重要です。細かい論点よりも、減損会計の処理の流れを図解でイメージをしたい方にはおすすめの本です。
【初学者向け】すらすら減損会計
<内容>
減損会計の計算だけでなく、計算の目的も併せて解説しています。本書を読めば減損会計の本質を理解できますよ。
<実際に読んでみて>
減損会計は計算だけでなく、何故減損をするのかを理解することが大事です。経営層や監査法人に減損を説明するときに、目的を理解していると事象を上手く説明できますよ。監査対応を担当している方にもおすすめな本です。
【実務者向け】こんなときどうする? 減損会計の実務詳解Q&A
<内容>
EY新日本監査法人が監査対応の経験を基に減損会計で論点となる事項を網羅しています。本書を読めば減損会計の実務は理解できます。
<実際に読んでみて>
減損を実務で処理すると様々な問題に直面します。経理の減損で困ったら、本書を読めばヒントが書いてありますよ。経理の実務担当者は手元に1冊置いておくと安心できる本です。
【図解:実務者向け】減損会計実務のすべて―図解と実例で会計・税務のポイントをつかむ
<内容>
減損会計を会計・税務面の両方から要点を絞って解説しています。本書を読めば減損会計の会計と税務の重要なポイントに要点を絞って学習できますよ。
<実際に読んでみて>
減損損失は税務上は損金として認められないので、法人税で調整が必要となります。減損損失を税務面からも解説しているので、税務を兼務している経理の担当者にはおすすめです。
【IFRS:実務者向け】IFRS「固定資産」プラクティス・ガイド
<内容>
PwCあらた有限監査法人が纏めたIFRSの固定資産関連の本です。固定資産の減損についても解説しているので、本書を読めばIFRSの減損損失だけでなく、固定資産の全般が理解できます。
<実際に読んでみて>
単純に規定を解説するだけでなく、実務に沿って解説をしています。なので、日系企業でIFRSを採用している企業の現状に即した内容になっています。IFRSで減損損失を理解するには、固定資産関係の知識も併せて勉強すると効率的に学べます。
【参考】東芝の事例から減損会計を学ぶ

日本を代表する企業であった東芝が、巨額の減損損失の処理の妥当性が世間から疑われた事案をご存知でしょうか。
事例としては、原子力事業での減損を2600億円計上したが、計上時期に妥当性が疑われた事案である。
東芝の減損会計の処理の問題点を含めて一連の事件を解説しているのが下記の本です。
実際に起きた話を会計の観点から公認会計士が解説し、分かりやすく事例が読めるのでおすすめです。
東芝事件総決算 会計と監査から解明する不正の実相
減損会計を学ぶのにおすすめな本の纏め
減損会計は難解なので、実務だけで学ぼうとしても混乱することが多いです。
なので、体系的に本で学んだ後に、実務でアウトプットすると理解しやすいですよ。
減損会計は定期的に生じる業務ではありませんが、減損が生じる可能性は全ての会社にあるので、勉強することをおすすめします。
一番のおすすめは【図解でざっくり会計シリーズ】4 減損会計のしくみです。本書は減損の判定フローが頭に入りやすいのでおすすめです。