金融商品会計は有価証券の評価、貸倒引当金、デリバティブ取引など多くの会社で使う論点が含まれています。
特に有価証券は種類の分類や、減損処理など重要な論点が含まれいるので、勉強しても損はない論点ではないでしょうか。
また、デリバティブ取引は投資を行わない方には馴染みがないので、本で一度体系的に学ぶとイメージがつきやすいですよ。
この記事では、金融商品会計を学ぶためにおすすめな本を紹介します。実際に私が経理の実務で参照していたものなので、金融商品会計を学ぶのに役立ちますよ。
では、纏めていきます。
【前提】金融商品会計の範囲と分類を知るのが大事
金融商品会計を理解するためには、金融商品会計の範囲と分類を抑えることが大事です。
金融商品会計は評価方法が資産や負債の分類により異なります。なので、金融商品の分類が正解にできれば、自然とどの規定を当てはめて処理をすれば良いか理解できますよ。
実務においては取引内容や契約書から事実を整理して、金融商品に該当するかを確認した後に、どの金融商品の分類に該当するかを決めていきます。
<代表的な金融商品の分類>
- 金融資産:売掛金・貸付金・有価証券など
- 金融負債:買掛金・借入金など
- デリバティブ取引:為替予約・スワップ取引など
※厳密に解説すると膨大な記述量となるので、多くの企業で扱う代表的なものを記載しています。あくまでもイメージを掴むためのものとしてみてくださいね。
【注意点】金融商品会計は日本基準とIFRSで差がある
金融商品会計は日本基準とIFRSでは有価証券の分類の名称が異なります。
<対応表>
- 日本基準:満期保有目的の債券⇔IFRS:償却原価区分
- 日本基準:その他有価証券⇔IFRS:FVTOCI
- 日本基準:売買目的有価証券⇔IFRS:FVTPL
日本基準もIFRSも大まかな処理内容は同じですが、その他有価証券の売却については大きく処理が異なる※1ので注意が必要です。
※1日本基準:売却損益をP/Lに計上⇔IFRS:包括利益に計上した評価差額金はP/Lに計上できない。
詳細は日本公認会計士協会の解説をご確認ください。→IFRS基準と日本基準の差異
なので、IFRSの金融商品会計を学びたい場合には、IFRSに対応した書籍を購入する必要があるのでご注意くださいね。紹介する金融商品会計の本でIFRSに対応して解説している本は、【IFRS対応】と冒頭に明記しますので参考にしてください。
包括的にIFRSを学びたい方におすすめな本→【IFRSを学ぶのにおすすめな本5冊】解説が分かりやすい書籍を紹介
【おすすめ】金融商品会計の解説が分かりやすい書籍5選
では、おすすめ書籍を纏めていきます。
まずは、箇条書きで紹介します。
- 【図解でざっくり会計シリーズ】3 金融商品会計のしくみ
- すらすら金融商品会計
- 3 Q&A金融商品の会計実務 (【現場の疑問に答える会計シリーズ】)
- ケースでわかる 一般事業会社のためのIFRS金融商品会計
- IFRS「金融商品の分類・測定」プラクティス・ガイド
では、一つ一つ解説していきますね。
【図解:初学者向け】【図解でざっくり会計シリーズ】3 金融商品会計のしくみ
<内容>
EY新日本監査法人の図解シリーズの金融商品会計版です。図解で初心者にも分かりやすく説明しているので視覚から金融商品会計をイメージできます。
<実際に読んでみて>
金融商品会計は専門用語が多く、文章だけだと慣れていない方は苦手意識を感じる可能性が高いです。まずは、図解で金融商品会計の全体像をイメージしたい方にはおすすめな本です。
【初学者向け】すらすら金融商品会計
<内容>
豊富な図表と事例で金融商品会計の基本の分類と会計処理を解説しています。本書を読めば金融商品会計の基本的な会計処理はマスターできます。
<実際に読んでみて>
分類ごとに要点を絞って解説しているので、重要な箇所を重点的に理解できます。金融商品会計の重要な部分に絞って学習をしたい方にはおすすめな本です。
【実務者向け】3 Q&A金融商品の会計実務 (【現場の疑問に答える会計シリーズ】)
<内容>
EY新日本監査法人が実務者向けに金融商品会計を網羅的に解説している本です。実務で気を付けるべきポイントが本書を読めば理解できますよ。
<実際に読んでみて>
金融商品会計を網羅的に解説しているので、本書を読めば金融商品会計の実務で直面する課題にほとんど対応できます。金融商品会計の実務を担当している方が手元に置く本としておすすめです。
【IFRS:実務者向け】ケースでわかる 一般事業会社のためのIFRS金融商品会計
<内容>
金融商品会計のうち一般事業会社に関係する部分に絞って解説しています。本書を読めばIFRSの金融商品会計の会計処理の流れが理解できます。
<実際に読んでみて>
株式の取得→評価→売却の一連の取引の流れに沿って解説しているので、イメージがつきやすいです。金融商品会計の実務の流れが知りたい方にはおすすめです。
【IFRS:実務者向け】IFRS「金融商品の分類・測定」プラクティス・ガイド
<内容>
PwCあらた有限監査法人がIFRSの金融商品会計の分類と測定を重点的に解説している本です。本書を読めばIFRSの金融商品会計で重要な分類と測定がマスターできますよ。
<実際に読んでみて>
IFRSの金融商品会計の分類と測定は複雑ですが、本書は実務に即して解説しているので理解しやすかったです。IFRSの金融商品会計の分類と測定に苦手意識がある方にはおすすめな本です。
【参考】金融商品会計と併せて包括利益計算書を勉強するのがおすすめ
金融商品会計は計算の結果、その他包括利益の構成要素を変動させる可能性が高いです。
その為、その他包括利益と密接な関係にあります。
代表的な項目としては、その他有価証券差額金、繰延ヘッジ損益があります。
その他包括利益は簡単に言えば確定していない損益をプールする場所と考えて貰えるとイメージがつきやすいです。
包括利益計算書は下記の本が概要を解説していて、分かりやすいです。
設例でわかる包括利益計算書のつくり方〈第2版〉
金融商品会計を学ぶのにおすすめな本の纏め
金融商品会計は難解なので、実務だけで理解するのは不可能と言っても過言ではありません。
特に金融商品会計の範囲と分類は、本を通じて正しく理解しないと実務で適用する会計処理を間違えてしまいます。
金融商品会計は複雑で難解な会計処理であり、監査法人と議論する機会が多いので勉強することをおすすめします。
一番のおすすめはすらすら金融商品会計です。本書は金融商品会計の対象を丁寧に解説しているので、初学者がまず身につけるべき知識が網羅されていますよ。