源泉所得税と聞くと総務や人事の仕事と思われる方も多いですが、経理も源泉所得税の知識は必要となります。
配当や利息の源泉所得税に係る仕訳を起票することに始まり、給与の源泉所得税の税務調査の対応や資金繰りの計画など、源泉所得税は経理業務と密接な関係があります。
特に中小企業で経理を担当している方は、労務や総務を兼務している方が多いので体系的に知識を身につけても損はありませんよ。
この記事では、源泉所得税の実務について知りたい方に向けて、おすすめの本を紹介しています。実際に中小企業と上場企業の経理で源泉所得税に係る業務をした時に参考にした本なので、実務に役立ちますよ。
では、纏めていきます。
【前提】源泉所得税とは何か?【企業は関係あるの?】
給与所得に係る源泉所得税の負担は主に個人(従業員)ですが、源泉所得税の納付義務は法人(企業)にあります。※1
例えば、給与・賞与などは源泉所得税が天引きされた額(手取り額)で、企業は従業員に支給をします。その後企業は天引きした源泉所得税を従業員に代わって国に納付します。
企業は個人の代理で源泉所得税を納付しているので、給与に係る源泉所得税を企業の費用としては認識しません。
しかし、企業が源泉所得税の取り扱いを間違えて国に納付する税金が過少となった場合には、企業に加算金の納付義務が発生します。
なので、企業側が源泉所得税を適切に理解することは、企業の収益を守る為にも重要なこととなりますよ。
※1 法人が受け取る配当金や利息に係る源泉所得税は法人の負担になります。
【参考】源泉所得税と所得税の違いは?
源泉所得税とは所得税の一部を構成する税金です。
所得税は大きく分けて2つの税金タイプから構成されています。
- 源泉所得税:源泉徴収で天引きされて企業(源泉徴収義務者)が代理して納付する税金
- 申告所得税:所謂確定申告で申告納付をする税金
源泉所得税と申告所得税は、同じ所得税でも納付計算や時期が異なるので、所得税のうち何の論点を話しているかを明確にするのが大事です。
源泉所得税を学ぶときに申告所得税も併せて理解すると相乗効果があるので、余裕があれば申告所得税の基本も勉強することをお勧めします。
<申告所得税の基本が分かる>
所得税の勉強におすすな本→【所得税を勉強するのにおすすめな本5冊】解説が分かりやすい書籍を紹介
【おすすめ】源泉所得税の実務の解説が分かりやすい書籍5選
では、おすすめ書籍を纏めていきます。
まずは、箇条書きで紹介します。
- 図解 源泉所得税 令和3年版
- 源泉所得税の誤りが多い事例と判断に迷う事例Q&A
- 新たな雇用・勤務環境下の源泉徴収の要否―Q&Aで理解する判断のポイント
- 税務調査官の視点からつかむ 源泉所得税の実務と対策~国内外の最新事例による顧問先へのアドバイス
- 事例でわかる国際源泉課税 (第3版)
では、一つ一つ解説していきますね。
【図解:初心者向け】図解 源泉所得税 令和3年版
<内容>
源泉所得税の仕組みや趣旨が初学者でも分かるように図解を用いて解説されています。本書を読めば源泉所得税の基本的な事項は理解できます。
<実際に読んでみて>
源泉所得税の基本的な事項を図解と専門用語を使わずに解説しているので、源泉所得税のイメージがつきやすいです。源泉所得税を初めて学ぶ方にはおすすめの本です。
【実務者向け】源泉所得税の誤りが多い事例と判断に迷う事例Q&A
<内容>
源泉所得税の実務で間違えやすいポイントを重点的に解説しています。本書を読めば源泉所得税でミスをする可能性を減らせます。
<実際に読んでみて>
源泉所得税は間違えるポイントが類似しているので、本書が纏めているミス事例を把握するのは実務で役立ちますよ。源泉所得税の実務を行う方が手元に置くのにおすすめの本です。
【実務者向け】新たな雇用・勤務環境下の源泉徴収の要否―Q&Aで理解する判断のポイント
<内容>
コロナの影響で従業員の働き方の変化に伴う源泉所得税への影響を解説しています。本書を読めば源泉所得税の近年の動向が理解できます。
<実際に読んでみて>
働き方の変化が源泉所得税にどのような影響を与えるのかを中心に解説しています。源泉所得税の実務者にはおすすめの本です。
【実務者向け】税務調査官の視点からつかむ 源泉所得税の実務と対策
<内容>
元税務調査官が調査の着眼点を元に、源泉所得税の実務で気をつけるべきポイントを解説しています。本書を読めば源泉所得税の税務調査対策は安心です。
<実際に読んでみて>
源泉所得税の税務調査で指摘される事例が纏まっているので、類似の事例が出たときに対策しやすいです。税務調査を担当している方にはおすすめの本です。
税務調査対策でおすすめの本→【税務調査の対策におすすめな本5冊】分かりやすい書籍を紹介
【実務者向け】事例でわかる国際源泉課税 (第3版)
<内容>
源泉所得税で難解な国外源泉税を実務者向けに解説しています。本書を読めば国外源泉税の実務は一通り理解できますよ。
<実際に読んでみて>
国外源泉税は租税条約を読み解く必要があり苦手意識をもつ方が多いです。しかし、本書は現場を知っている方が執筆しているので実務者向けに解説をしており読みやすいです。国外源泉税を担当している方にはおすすめの本です。
【参考】所得税(源泉所得税)の実務は資格勉強でも学べる
源泉所得税だけでなく、所得税の全体像を知りたい方は、体系的に学習ができる資格の勉強をするのもおすすめです。
本を読むことでも税法は学べますが、実際に問題を解くことでより深い理解に繋がります。
<おすすめ検定>
- 所得税法能力検定(1級~3級)→全国経理協会公式HP(所得税法能力検定)
1級でも優しめの基本的な問題で構成されており、勉強すれば確実に合格できるレベルです。
しかし、1級~3級を学べは税務担当として必要な知識を体系的に勉強できるのでおすすめですよ。1級まで勉強すれば、基本的な所得税の業務は一人で作業できるレベルになります。
勉強方法は公式テキストを利用すれば、独学でも全く問題なく合格できます。
所得税法能力検定の公式テキスト&問題集
源泉所得税を学ぶのにおすすめな本の纏め
源泉所得税は処理を誤ると税務調査で指摘を受けて、余分な税金(加算税)を払う必要が生じます。
なので、ミスを事前に防ぐために源泉所得税を体系的に理解して、実務でミスをしやすいポイントを抑えるのが大切となります。
源泉所得税は1度理解すれば、経理・労務・総務で一生使える知識なので身につけて損はありませんよ。
一番のおすすめは図解 源泉所得税 令和3年版です。本書は源泉所得税はの基本的な事項を図解で説明をしているので、短時間で源泉所得税のイメージを掴むには最適な本ですよ。